小津 誠一

建築家/有限会社E.N.N.代表/株式会社嗜季代表東京の設計事務所などを経て、京都にて「studio KOZ.」を設立。2003年に金沢にて「E.N.N.」設立後、金沢に活動の本拠地を置き、建築設計、不動産、空間運営などを横断的に携わる。

まちのことは、自分のこと。潜在的課題を事業化へ。

今回の参加者は、与えられたテーマに対して課題を考えられる人が多かった。県外からの参加者も、福井在住のユニットマスターが伴走してくれたことで、まちのことを自分事としてプロセスを踏まえることができたと感じている。「まちづくり」は単なる自己実現だけでは成立しない。まちを観察し、その中の潜在的な問題を自分にいかに引き寄せて考えられるかが重要。前回の第1回目となるディスカバリー福井(以下DRF)では「仮設」「本設」「妄想」の3チームに分かれたけど、実は事業を考える上ではすべてが大切な要素。現実を考え過ぎてもつまらないし、妄想が度を超えても実現化には至らない。本当に事業化するには、それぞれのバランスと粘り強い継続力こそが必要だと知ってほしい。

あと3年。人と仕組みを、どう変えることができるか?

今回のDRFは「公共空間」の活用が大きなテーマとなったが、特に感じたのは行政やまちづくり団体自体のリノベーションの必要性だった。せっかくのアイデアがあっても管理側が理解できなかったり、壁となってしまってはとてももったいない。DRFを開いている間だけ考え直すのではなく、継続してアイデアを投じながら、小さなことから少しずつトライアンドエラーを繰り返してもいい。それを視覚化することで、まち全体の意識を少しずつ変えられるはずだと思う。たった数回のワークショップだけでは、まちづくりは決してできないからね。DRFの精神を受け継ぐ人たちが増え、それが大きなムーブメントになって、3年後の福井のまちにもっともっと多種多様な人々が集っていることを期待している。

出水 建大

株式会社建大工房 代表取締役。FLATやCRAFTBRIDGEなどを手がけ、福井県内のセルフビルドやリノベーションに関わる様々なプロジェクトに携わる。

「応援するよ」から「自分がやるぞ」へ。

DRFは、いかにまちに自分がコミットできるか?を学び実践する場所。個人的には2泊3日の短期集中型が良いかな。長く座学で勉強してしまうと、つい頭でっかちになってしまって、瞬発力が減る。すると、アイデアもつまらないものになるから。僕はリノベーションの講座に参加することはウィルスに感染するようなものだと思ってる。徐々に症状が出てくるのか、一気に現れるのかわからないけれど、一度人の心にとどまると、ずっと引っかかるもの。DRFに関わった人も、じわじわとリノベーションの思考やアイデアができる人が多くなっていって、いずれパンデミックのようにまちを席巻するようになるとおもしろいね。

石田 竜一

株式会社テナワン 代表取締役。東京を拠点に中古ビルを専門に取り扱う不動産会社を経営しながら、福井との二拠点活動を行う。DRF第1期生でもある。

DRFは自分の第一歩を踏み出す場所。

リノベーションっていう言葉で尻込みする人もいるかもしれないけど、ハード、つまり建築について詳しい必要なんてない。それよりも、いろいろな制約の中で一体何ができて、どれだけの事業を描けるか?っていうアイデアや提案力が必要。そもそも「自分ができることって何だろう?」という気持ちで参加している人も多いから、事業化と言われてもピンとこないかもしれない。だけど、いきなり大きなことなんてできないし、自分一人では何もやれない。小さいことから挑戦して、自分にとって何が足りないかを知り、次の第一歩は何なのか?を真剣に考えてみてほしい。DRFはそんなきっかけの場になればと思う。