殺風景な河川敷をまるごとリノベーション

【物件情報】
・幸橋北詰新橋ビル2F(中央1丁目)
・持主:個人
・昭和56年建築・鉄筋造5階建・延床面積:57.56㎡
*現持主は1Fでフルーツ屋を経営

 福井のまちなかを走るフェニックス通りが足羽川をわたる「幸橋」の北詰交差点にある物件。老舗果物店として知られる「フルーツのヨシダ」の2階部分は、交通量の多い大通りに面しながらも長年空きテナントとなっていた。

 物件の特徴として、2階にもかかわらずグランドレベルに近い位置にあること、足羽川に面して見晴らしが良いことを挙げ、川辺との連携をアイデアのベースとした。

 歴史的に見れば、かつて足羽川の河川敷は桃林が広がり、その風景を眺めながら人々が集まるにぎわいの場所の一つであった。

 しかし、近年は福井のまちなかにありながら、花見以外のシーズンは特に利用されず、殺風景であることにも着目。もう一度、人々が集まる場所にするための事業提案が練られた。

農産物の廃棄を活用する事業へ

 川辺という公共空間を積極的に活用するため、オーナーが取り扱っている果物とのコラボレーションを軸に、水辺活用推進プロジェクトの「ミズベリング」についてヒヤリングを実施。河川敷の活動拠点として、対象物件である「フルーツのヨシダ」の2階部分の利用を考えた。

 この場所を利用して、「野菜の販売」「足羽川の眺望の活用」「人々の交流の場づくり」を仕掛ける。

 まず、野菜の販売は、個人の畑や農家から廃棄野菜・果物が多く出ることを受け、廃棄ロスを防ぐために、安く仕入れて安く販売したり、スムージーなどの商品を開発して加工販売を行う。

 さらに、河川敷では、屋台や椅子、テーブルなどを設置して、オープンマルシェやファーマーズマーケットのイベント開催を提案。イベントなどが行われていない日は、対象物件の中で野菜の販売や加工品の提供を行い、人々が集う機会をつくる。まちなかに拠点を置くことで、河川敷、橋への回遊性を高め、まちの通りににぎわいを増やすことが狙いだ。

講評 [リージョンワークス 後藤太一氏]

「野菜と景色と人という大きなテーマが3つあるので、何から始めるのかをはっきりした方が良い。例えばオーナーさんが果物を取り扱っているのだから、野菜ではなく果物に絞る方が、事業を開始する上では解像度が上がる。まちなかは商店街だけではない。果物という商材の背景には『農業』がある。まちなかだから駅前だけの問題と限らずに、まちを大きく捉えて事業展開を提案してくと良いだろう」